退職金の有無や支給条件は企業ごとに異なるため、転職前にしっかり確認しておくことが大切です。しかし「退職金制度の種類がよくわからない」「転職すると退職金が減るのではないか」と悩んでいる方も多いでしょう。

そこで、この記事では転職前に知っておきたい退職金の知識5選を解説します。退職金制度の種類や減額を防ぐ方法も紹介するので、転職を検討している方は最後までご覧ください。

転職前に知っておきたい退職金の知識5選

転職を考えている方は、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

  • 退職金制度がある企業は74.9%
  • 一般的に転職すると退職金が減る
  • 3年以内の転職では退職金が期待できない
  • 自己都合退職だと減額されることが多い
  • 退職金の受け取り方で税金が大きく変わる

退職金制度がある企業は74.9%

厚生労働省が公開した「令和5年就労条件総合調査概況」によると、企業の74.9%が退職金制度を設けています。しかし、この割合は企業規模や業界によって異なります。

たとえば、従業員数1,000名以上の企業では、退職金制度がある企業の割合は90.1%に達しており、非常に高い水準といえるでしょう。一方、従業員数30〜99名の企業では70.1%にとどまり、従業員数が多いほど退職金制度を導入している傾向が見られます。

業界別に見ると、複合サービス事業(97.9%)と鉱業・採石業・砂利採取業(97.6%)が高い割合です。対照的に、宿泊業・飲食サービス業では42.2%と大きく下がります。

このように、企業規模や業界によって退職金制度の有無が異なるため、転職時には事前に確認することが重要です。

一般的に転職すると退職金が減る

退職金は、多くの企業で勤続年数に応じて増えていく仕組みになっています。したがって、途中で転職すると勤続年数がリセットされるため、最終的に受け取れる退職金の総額が少なくなる可能性が高いです

たとえば、A社に20年間勤め続けた場合、退職金は20年分として計算され、一定の金額を受け取れます。一方で、10年目で転職し、A社とB社にそれぞれ10年ずつ勤めた場合、それぞれの企業での勤続年数に応じて別々に計算されるため、合計額は20年勤続の場合よりも少なくなるのが一般的です。

このように、転職によって退職金が目減りする可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

3年以内の転職では退職金が期待できない

多くの企業では、退職金の支給条件として「勤続3年以上」や「勤続5年以上」といった基準を設けており、これに満たない場合は支給の対象外となるのが一般的です。こうした制度は、従業員の早期離職を防ぎ、定着を促すための施策のひとつといえます。

そのため、短期間での退職には退職金を支給しない、あるいは支給しても金額が少額にとどまるケースは少なくありません。このような制度からもわかるように、短期間で転職を繰り返すと将来受け取れる退職金が減少し、結果として資産形成に影響を与える可能性があります。

自己都合退職だと減額されることが多い

退職には「自己都合退職」と「会社都合退職」があり、理由によって退職金の支給額が異なります。自己都合退職とは、転職や家庭の事情など、本人の意思によって退職するケースです。

一方、会社都合退職は、リストラや倒産など、本人の意思とは関係なく退職せざるを得ない状況を指します。企業は、会社都合退職の場合には従業員の生活を支援する必要があると考えるため、退職金を手厚く支給する傾向があります。

逆に、自己都合退職ではその必要性が低く、支給額が減額されるケースが一般的です。たとえば、勤続年数が同じでも、会社都合退職なら100%支給されるのに対し、自己都合退職では80%程度にとどまることも少なくありません

退職金の受け取り方で税金が大きく変わる

退職金の受け取り方には、一括で受け取る「一時金」と、分割して受け取る「年金形式」の2種類があります。両者では課税方法が異なるため、税負担にも大きな差が生じる可能性があります。

一時金で受け取る場合は「退職所得控除」という優遇制度が適用されます。控除額は勤続年数に応じて増える仕組みで、長く勤務するほど非課税枠が広がります。たとえば、20年勤続した場合、控除額は800万円(40万円×20年)となり、これを超えない退職金には課税されません。

一方、年金形式で受け取る場合には「公的年金等控除」が適用されます。この控除も税負担を軽減しますが、一時金に比べて控除額が少ないケースが多く、課税対象が増える可能性があります。

ただし、年金形式は退職金を数年にわたって受け取るため、所得が分散され、累進課税の影響を抑えられるというメリットもあります。どちらの受け取り方法が有利かは、退職金の総額や他の収入との兼ね合いによって変わります。

また、どちらの受け取り方法が適用されるかは企業や制度によって異なるため、自分の勤務先の規定を確認しておくことが大切です。

退職金制度の種類

退職金制度には、主に次の4つの種類があります。

  • 退職一時金|企業が積み立て、退職時に一括支給
  • 退職金共済|中小企業が共済制度を活用して支給
  • 企業年金|退職後に分割して年金として支給
  • 退職金前払い制度|給与に上乗せして毎月支給

退職一時金|企業が積み立て、退職時に一括支給

退職一時金制度は、企業が従業員のために積み立てた資金を、退職時に一括で支給する制度です。日本ではこの方式が多くの企業で採用されており、退職金制度のなかで最も一般的な形態といえます。

この制度には、退職時の最終給与をもとに支給額を算出する「最終給与比例方式」や、勤続年数や役職などを評価基準としてポイント化し、支給額を決定する「ポイント制」などの計算方法があります。一括でまとまった金額が受け取れるため、退職後の生活資金や住宅ローンの返済、起業資金など大きな支出への備えとして活用しやすいのが特長です。

退職金共済|中小企業が共済制度を活用して支給

退職金共済は、企業が外部の共済制度を利用して、従業員の退職金を積み立てる仕組みです。特に、中小企業が独自に退職金制度を構築・運営することが難しい場合に活用されています。

代表的な制度としては「中小企業退職金共済制度(中退共)」や「特定業種退職金共済制度(特退共)」があり、いずれも企業が毎月一定額の掛金を共済機関に納め、従業員の退職時に給付が行われる方式です。

このような制度に加入していれば、万が一企業が倒産しても退職金の受け取りが保障されるため、従業員にとっては大きな安心材料となります。ただし、共済の掛金には上限があるため、大企業が採用している退職金制度と比較すると、支給額が相対的に少なくなるケースもあります。

企業年金|退職後に分割して年金として支給

企業年金は、退職金を一括で受け取るのではなく、月単位や年単位で分割して受け取る制度です。代表的な制度には「確定給付企業年金(DB)」と「確定拠出年金(DC)」の2つがあります。

確定給付企業年金(DB)は、企業が将来の給付額をあらかじめ約束し、その金額を退職後に受け取る方式です。運用は企業が行うため、従業員は運用リスクを負わずに一定額を受け取れるのがメリットといえます。

一方、確定拠出年金(DC)は、企業や従業員が毎月掛金を拠出し、従業員自身がその資金を運用する仕組みです。将来受け取れる金額は運用成果によって変動しますが、自分の判断で資産運用ができるという柔軟性があります。

企業年金は、一定額を定期的に受け取れるため、老後の生活資金として計画的に使いやすいのが特徴です。ただし、一括でまとまった金額を受け取れないため、住宅購入や起業など、大きな支出には対応しにくいという側面があります。

退職金前払い制度|給与に上乗せして毎月支給

退職金前払い制度は、退職時にまとまった金額を一括で支給するのではなく、毎月の給与に上乗せする形で退職金を分割して支給する仕組みです。近年では、転職が一般的になり、長期雇用を前提としない働き方が広がっています。

これにより「退職時にまとまったお金を受け取るよりも、在職中の収入を安定させたい」というニーズが高まり、それに応じて退職金前払い制度を導入する企業が増えています。この制度では、受け取った金額を自分のタイミングで自由に使えるため、ライフステージに応じて柔軟に資金計画を立てられる点が大きなメリットです。

一方で、退職時に大きな金額を受け取れないため、老後資金などに備えるには、計画的な資金管理がより重要になります。

退職金の減額を防ぐ方法

退職金の減額を防ぎたい方は、以下の3つの方法を試してみてください。

  • 退職のタイミングを調節する
  • 転職先の退職金制度を確認する
  • 転職エージェントに相談する

退職のタイミングを調節する

企業の退職金制度では、勤続年数や最終給与をもとに支給額が決定される仕組みが一般的です。これにより、退職のタイミングがわずかに違うだけで、受け取れる退職金の額に大きな差が生じることがあります。

たとえば、10年勤務で支給率が上がる場合、9年11ヶ月で退職するよりも、10年満了で退職した方がより多くの退職金を受け取れる可能性があります。また、昇給や昇格によって退職金の算定基準となる給与が増加すれば、支給額にも影響するため、退職時期は慎重に検討することが重要です。

転職先の退職金制度を確認する

退職金の有無や支給条件は企業によって異なるため、転職を検討する際は、事前に退職金制度を確認しておくことが重要です。応募段階では、企業の公式サイトにある採用情報や福利厚生のページをチェックしましょう

退職金制度の有無や概要が記載されていることがあります。また、転職口コミサイトを活用して、社員の実体験や評価を参考にするのも有効です。

内定を得て企業とやり取りできる段階であれば、就業規則や退職金規定を確認してみましょう。文書の閲覧が難しい場合は、人事担当者に制度の有無や内容を直接問い合わせるのも一つの方法です。

退職金は将来の資産形成に直結するので、入社前に制度の有無や内容をしっかりと確認しておきましょう。入社前に確認すべきポイントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:転職者が入社前に聞いておくべきこと12選!質問時に注意すべきことも解説

転職エージェントに相談する

転職活動中の方には、転職エージェントの活用がおすすめです。エージェントは企業の退職金制度や給与体系に詳しく、福利厚生の整った企業を紹介してくれるため、希望に合った転職先を見つけやすくなります

たとえば、東海3県に特化した弊社の「転職エージェント」では、1対1の面談を通じて、キャリアプランに沿った求人をご提案しています。在職中の方には、退職手続きやタイミング、企業とのやり取りに関するアドバイスも行っています。

円満に退職できれば、退職金の受け取りも円滑に進むので、東海地方で転職を考えている方はぜひ活用してみてください。

退職金に関するよくある質問

実際に退職する前に、よくある質問についても確認しておきましょう。

  • 退職金制度があるかはどこで確認できる?
  • 転職先で退職金制度がない場合はどうすればいい?
  • 退職金は転職先に引き継げる?
  • 退職金の計算方法は?
  • 早期退職制度を利用すると退職金は増える?

退職金制度があるかはどこで確認できる?

退職金制度の内容を確認したい場合は、まず就業規則や退職金規程に目を通しましょう。これらの書類には、支給条件や計算方法などが詳しく記載されています。

また、転職時に交わした労働契約書や雇用条件通知書に、退職金に関する情報が含まれていることもあります。どこに情報が載っているかわからない場合や内容に不明点がある場合は、人事担当者に直接問い合わせるのが確実です。

転職先で退職金制度がない場合はどうすればいい?

退職金制度がない企業であっても、将来の資産形成に役立つ制度が用意されていることがあります。たとえば、確定拠出年金制度やストックオプションなどは、従来型の退職金とは仕組みが異なりますが、長期的な資産づくりに有効です。これらの制度が導入されているか、事前に確認しておくとよいでしょう。

あわせて、自分自身で老後資金を準備する手段として「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の活用もおすすめです。iDeCoでは、毎月積み立てた金額が所得控除の対象となるため、節税効果を得ながら資産運用ができます。

さらに、積立NISAや年金型の生命保険などを組み合わせることで、資産形成をより充実させることも可能です。

退職金は転職先に引き継げる?

退職金は企業ごとに制度が異なるため、基本的に前職から転職先へ引き継ぐことはできません。転職先では、新たにその企業の制度に基づいて積み立てが始まるのが一般的です。

ただし、前職で「確定拠出年金(DC)」を利用していた場合は、転職先の企業型DCやiDeCoへ資産を移管できるケースもあります。

退職金の計算方法は?

多くの企業では「退職時の基本給×勤続年数×支給率」といった計算式が採用されていますが、ポイント制を導入している企業もあります。ポイント制では、勤続年数や役職などに応じてポイントが付与され、その合計に基づいて退職金額が算出されます。

このように計算方法は企業によって大きく異なるため、自分の退職金の算出方法を知りたい方は、あらかじめ人事担当者に確認しておきましょう。

早期退職制度を利用すると退職金は増える?

早期退職優遇制度は、企業が人員削減などを目的に実施するもので、通常の自己都合退職よりも退職金が増額されるケースがあります。割増退職金や特別手当が支給されることもあり、勤続年数が短くても多くの金額を受け取れる可能性があります。

ただし、この制度の内容は企業によって異なり、必ずしも退職金が増えるとは限りません。また、早期退職で一時的に高額な退職金を得たとしても、その後の再就職が難航すれば、資金計画が崩れるリスクもあります。

このような点を踏まえたうえで、自社の制度をしっかり確認し、自身のライフプランに照らして慎重に判断することが大切です。

まとめ

この記事では、転職前に知っておきたい退職金の知識や減額を防ぐ方法について解説しました。退職金制度の違いや受け取り方を理解することで、転職後の資金計画を立てやすくなります。

また、退職のタイミングを工夫することで、退職金の減額を防げます。退職金は資産形成に直結するため、転職を検討している方は、この記事を参考にしながら最適な退職時期を見極めてみてください。

退職金の減額を防ぎたい方は、転職エージェントに相談するのがおすすめです。たとえば、愛知・岐阜・三重に特化した弊社の「転職エージェント」では、退職に伴う手続きや交渉のアドバイスを行っています。

さらに、東海3県の地元企業に詳しいキャリアアドバイザーが、退職金制度が充実した企業をご紹介することも可能です。無料で利用できるので、東海地方で転職を考えている方は、積極的に活用してみてください。

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